井伊直満・今川家に殺害された直政の祖父

井伊直満は井伊直政の祖父。井伊直虎の許嫁だった直親の父親です。

当時、今川家の支配を受けていた井伊家では今川家に従う勢力と反発する勢力がいました。直満は反今川の中心的な人物でした。

息子の直親を井伊宗家の養子にすることで、さらに井伊家での立場は大きくなると思われました。ところが家老の小野和泉守に今川義元に謀反を計画してるとして訴えられ、駿府に呼び出されて殺害されてしまいます。

 井伊直満(いい なおみつ)とは

名 前:井伊直満(いい なおみつ)
通称・官名:彦次郎
生 年:不明
没 年:年月日(1544年)
父:井伊直平
子:井伊直親

井伊直平の息子。のちに井伊家当主になる井伊直親の父です。井伊家当主・井伊直盛の叔父にあたります。当時の井伊家は今川家の支配を受けていました。直満は今川家に服従するのを快く思わない勢力の中心的な人物でした。

直盛に息子が生まれなかったたため、直満の息子・亀之丞と直盛の娘(直虎)との縁談が決まりました。この縁談が成立すれば直満は井伊家跡取り父として大きな発言力を持つはずでした。これは井伊家で反今川の勢力が力を持つことを意味します。

天文13年(1544)。今川義元に呼び出され、弟の直義とともに駿府に向かいます。義元に呼び出された直満は弟の直義とともに今川家に謀反を企てているとして尋問を受けます。

井伊家の家老・小野和泉守が「直盛と直義が勝手に兵を動かし、今川に謀反の疑いがある」として今川義元に訴えたのです。

直満は疑いを晴らそうと弁解しますが、同席した小野和泉守は言葉巧みに義元に訴えます。直満と直義は義元によって殺害されました。

義元は直満兄弟を殺害しただけでなくまだ9歳の亀之丞まで処刑するよう命令しました。こうして亀之丞は逃亡をすることになります。

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なぜ直満は殺害されたのか

当時、井伊の領地を南信濃の武田勢が脅かしていたので、それに備えるために兵を出したのを口実にされたとも。もともと小野家とはうまくいってなかった直盛が井伊家で力を持つのを恐れたとも言われます。

今川義元は武田信虎と同盟を結んだ直後でした。直満が武田の兵に対抗するため兵を出したのだったとしたら、義元にとっては許されないことでした。義元にとっては井伊家の領地よりも武田との関係のほうが大切なのです。小野和泉守から直満兄弟が反今川の勢力だと聞かされていたでしょう。直満兄弟は小野和泉守にとっても今川義元にとっても目障りな存在だったのかもしれません。

家老が当主の叔父に謀反の疑いをかけて殺害してしまったのに「井伊家では小野和泉守を処分しないのはおかしい」と思う人もいるかもしれません。

戦国時代の主従関係は江戸時代のような主君と家臣が絶対的な上下関係はありませんでした。領主といっても地域の代表のようなものです。家臣団は緩やかな集まりでした。利害関係が一致しなければ簡単に裏切ってしまう世の中です。家老と言っても常に主君のために働いてるわけではありませんでした。

さらに井伊家は今川家に服従している立場です。家老の小野和泉守は今川家から井伊家の監視役を与えられている立場でした。形の上では小野家は井伊家の家臣ですが、井伊家の判断で小野和泉守を排除するわけにもいきません。井伊家としては不満でも今川家の意向に従うしかなかったのでした。

直満が若輩の直盛にとって代わろうと謀反を企てた。それを防いだのが小野和泉守という説もあります。しかし、それなら井伊家の人々が今川義元の命令に逆らってまで謀反人・直満の息子(亀之丞・直親)を守ったり、直盛が直親を養子にするのは不自然ですよね。

北条とつながっていたのは大河ドラマオリジナル設定

大河ドラマ「おんな城主直虎」では井伊直満は北条に密書を送っています。密書を送ったことがばれて処刑されてしまいました。

しかし歴史上は井伊直満が北条とつながっていたという証拠はありません。ドラマオリジナルの要素です。

天文6年(1537)。今川義元が家督をついだ直後、北条氏綱が東駿河に攻め込んだ河東の乱では、北条氏綱は遠江・三河の領主を調略しました。井伊直平も北条の呼びかけに応じて今川に抵抗したと考えられます。しかし今川義元に鎮圧されて人質を出すことになってしまいました。この時期、再び北条とつながって抵抗するのは不自然な感じもします。

ドラマでは直満は密書を送っているので処刑されても文句は言えません。密告した小野和泉守も、今川家に対する忠義からしたことだと正当化できます。小野和泉守(直虎の幼馴染の父親ですから)を必要以上に悪役に描きたくないという製作者の意図かもしれませんね。

次郎法師(直虎)の通説(一般的に信じられている話)のもとになってる「井伊家伝記」では井伊家内部の争いは描かれていません。今川に虐げられる井伊家と、今川とつながっている小野和泉守親子の姿が描かれています。ところが現代の作家の間では井伊直満が井伊家を牛耳ろうとする野心のある人物、小野和泉守は今川と井伊家の安泰を願う忠臣として描くことが流行ってます。

通説通りでは面白くないという作家心理はわかりますが、次郎法師(直虎)については通説自体が知られていません。あまりひねりすぎるのも誤解を招くもとになりそうですね。

主な参考資料
梓澤要,城主になった女 井伊直虎,NHK出版
石田正彦,おんな城主 井伊直虎 その謎と魅力,アスペクト
楠戸義昭,この一冊でよくわかる! 女城主・井伊直虎 PHP文庫
歴史REAL おんな城主 井伊直虎の生涯,洋泉社MOOK 歴史REAL
井伊家のひみつ,ぴあMOOK