映画「関ヶ原」の感想・戦国ファンなら観て損はなし

映画「関ヶ原」観てきました。面白かったですね。歴史を扱った久々の大作映画とあって楽しみにしていました。期待通りの内容になっていました。

この映画は司馬遼太郎の小説「関ヶ原」が元になっています。

石田三成を主人公にして関ヶ原の合戦で敗れて処刑されるまでを描いた作品です。徳川家康と小早川秀秋も主要人物として出てきます。

いまでこそ石田三成は豊臣秀吉に仕えた「義」の人という考え方がありますが。古い歴史ファンや研究家の間では石田三成は徳川家康に逆らって滅ぼされた一流半の部将、豊臣家を滅ぼした張本人。秀吉にあることないこと吹き込んでそそのかした卑怯者。との評価が多かったのではないでしょうか。徳川の視点からみた三成像が語られることが多かったと思います。

司馬遼太郎の「関ヶ原」は石田三成の義の部将としてのイメージを広めた画期的な作品かもしれません。

小説では、優れた才能を持ちながらも人間的な欠点の持ち主として描かれる石田三成。物語の人物としてはおもしろいキャラクターになっています。

その小説がどのように映画化されるのか。歴史ファンなら気になります。

原作の小説は長いです。分厚い文庫本で3冊あります。さすがに全部を映画にすることは出来ません。映画のシーンは関ヶ原の合戦当日とその前後を集中して描いてます。

映画を見た感想や気づいたことを紹介します。

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石田三成と島左近の出会い

映画が始まってしばらくして始まる豊臣秀次の処分を決める場面。すぐに三条河原で秀次の側室や子どもたちが処刑されるシーンになります。石田三成は、その処刑を観に来ていていた島左近を見つけて後をおって説得して家臣にしました。

歴史に詳しい人なら「おや?」と思うのではないでしょうか。豊臣秀次とその妻子が処刑されたのは文禄4年6月(1595年)。

小説では石田三成が4万国の大名になったときに島左近を召し抱えたという説を採用しています。だとすると天正14年(1586年)ごろ。かなりずれてますね。

なぜ原作と変えてまで島左近の登場場面をずらしたのかはわかりません。映画に収めるために短くした影響なのかもしれませんね。

三成と初芽の出会い

原作では「初芽の局」という侍女が登場します。石田三成と淀殿の仲を裂くために藤堂高虎が送り込んだ間者という設定です。最初は敵として出会いながら次第に三成の恋人になっていきます。(三成は敵として思っていません)

映画では初芽の登場の仕方が違います。先程書いた豊臣秀次の妻子を処刑するシーンで登場。秀次の側室になる予定だった娘ということになってます。しかも伊賀の忍びが最上家に仕えていたという設定。処刑場で大乱闘を起こして三成に助けられ、三成に仕えることになります。「いや、それはないでしょう」という展開です。原作を知ってる人なら唖然とする内容ですね。

でもその後は大筋では原作通りに話が進みます。

映画は原作のダイジェスト版

映画は全体的にはダイジェスト版のような作りになっています。歴史上の出来事が、短いシーンで再現され切り替わっていきます。2時間ちょっとの映画で細かいいきさつを再現するのは無理がありますから仕方ありません。

その割には秀吉が生きてる場面が長いです。三成と秀吉との出会いの場面。秀次の処分を決めたり、妻子を処刑する場面。朝鮮出兵での小早川秀秋の行いを諌める場面など。

冒頭の原作者(司馬遼太郎)が子供のころに近江の寺に行ったシーンはいらないと思います。原作でも一番最初にある場面ですが。長い小説だからこそ付けられた場面なので、できるだけコンパクトにまとめないといけない映画ではいらない。

そのぶん、もっと三成と家康の駆け引きに使ってほしかったです。

と、ちょっと残念な部分はありますが。それでも歴史好きなら面白い映画だと思います。

映画版「関ヶ原」の見どころ

なんといっても。映像表現のスケールの大きさ。といっても、草原みたいなところで大勢がひしめき合っているという映像ではありません。

意外にも大軍同士の戦闘はあまり描かれていないです。

山深い自然の中。各地で戦いが行われています。陣地から陣地へ行くのにも馬で走って時間がかかる。その間には敵兵もいるし戦闘も行われている。

戦闘は戦国時代に起きていたと思われる戦いをよく表現していると思います。槍や鉄砲だけでなく。斧や槌を持つ兵がいたり。盾で防御する兵もいたり。それぞれの役割をもった兵が各地で戦っている様子が描かれていました。

TVドラマでよく見るような、平原で騎馬や槍兵がぶつかりあうだけの映像ではなく新鮮味があります。

それだけに戦の表現がちょっと生々しいです。まさにお互いが死力を尽くして殺し合いをしています。ゲームやTVドラマのようなきれいな戦いではありません。これには好き嫌いあるかもしれません。でも戦が起きればこういうふうになるのだなと思いました。

あと、生生しいといえば着るものやメイクも当時の風俗や習慣に合せているようです。身分の高い既婚女性はおしろいで顔が白いし眉を剃ってお歯黒。部屋も薄暗い。着物は薄汚い。大河ドラマの「平清盛」ほどではありませんが。かなりリアルに汚れてます。こういうリアルな映像は映画館で鑑賞すると見ごたえがありますね。

小早川秀秋の裏切りの表現

関ヶ原の合戦といえば、裏切り。でも映画では小早川秀秋の描かれかたが原作とは違います。

原作では徳川家康から裏切りを催促する使者が来て、それに答える形で秀秋が大谷吉継の陣に攻め込みます。

さすがに鉄砲で裏切りを催促するのは無理がある(陣地が離れているので弾が届かない。音も聞こえない)ので司馬遼太郎の原作でも鉄砲は使わず使者を送ってます。

映画では家康に味方すべきか悩んでる小早川秀秋のもとに石田三成の使者として島左近の息子が来ます。左近の息子の言葉を聞いて三成に味方を決意しますが。秀秋の言葉は届かず家臣たちが勝手に兵を動かして大谷軍を攻めます。

「それは違うでしょ」と思いつつ観てました。

原作の小早川秀秋はうつけ者扱いであまりいい描かれ方をしてません。映画の小早川秀秋はそれなりに「いい人」として描かれています。様々な説のある小早川秀秋ですが。物語ならこういうのもありなのかもしれません。

原作だと、戦で負けたあとの石田三成は小早川秀秋と出会った時、裏切りを責め罵倒します。
映画では、秀秋は素直に詫びて三成は秀秋を許します。映画版の「いい人」の秀秋ならこういう扱いになるのかなと思いました。

小説と映画にはそれぞれの良さ

関ヶ原の戦いを扱った映画としてはよく出来ていると思います。

原作ファンからみると、細かい点で不満はあるとは思います。長い小説の中で描かれる三成と家康の駆け引き。それ以外の様々な部将の思いと行動は読み応えがあります。

映画版は細かい駆け引きは省略して、戦国時代の戦いを映像で楽しむという点に特化しているように思えます。歴史上の出来事はきちんと抑えてあるので「関ヶ原の戦いはこういう流れで起きたのか」とわかります。

原作ファンも、原作を知らない人も。戦国時代好きなら観て損はない作品だと思います。


関ヶ原〈上〉 (新潮文庫)
関ヶ原〈中〉 (新潮文庫)
関ヶ原〈下〉 (新潮文庫)

コメント

  1. コウイチ より:

    文也様こんばんわ。長野も台風の夜です。それはさておき、映画『関ヶ原』のわかりやすい解説や感想ありがとうございます。自分は小説は読んでなかったので、わからなかったのですが、やはり原作と映画じゃ違いがあるのですね。まあ2時間の映画に収めるには難しいのでしょうね。最近の映画みたいに1部2部で分けて全体で4時間ぐらいの超大作にすれば、かなり面白くなって、第二次上田合戦も同時に描写できたかもしれませんね。

    • 文也 より:

      コウイチさん、こんにちは。原作は長編なので映像化するのは難しそうですね。映画はTVドラマでは出来ない迫力のある合戦シーンができるのでもっと見たかったですね。